孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 茶葉を入れたポットにお湯を注ぎながら、さっきまで誰も居なかったリビングを見る。

 コートを脱いだ社長が私の部屋のソファに座っている。

 とてつもない違和感に夢でも見ているのかと思うほどだ。

 そんな夢心地でも、心をほくほくと幸せにしている自分の恋心に口元が緩む。

 めったに使うことのないお客様用のカップにルイボスティーを注ぎ、トレーに乗せてふっと視線を上げると、ソファの背もたれで頬杖をついた社長と目が合った。

 手元がびくっと震えるほど驚く。もちろん、ときめきで。

 かっと頬を熱くして、社長の元へおずおずと足を進める。

 その間もずっとこちらへ向けられている視線をバシバシと感じていて、近づくにつれて目眩がひどくなった。


「ルイボスティーですけれど、大丈夫ですか?」


 社長のそばに膝をつき、強く感じる視線に顔を上げられないままカップをローテーブルに並べる。


「ああ、好きだよ」


 トレーを引き上げようと腰を上げると、大きな手のひらに腕を掴まれて、ひょいとソファに座らされた。
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