孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「その方は、社長にとって大切な……」

「そうだな。こっちに家を構えて、落ち着いたら連れてこようと思っていた」

「そう、ですか……」


 ルイさんの言う通りだった。

 私はこちらにいる間だけの一時的な存在。

 だけど、社長はもうすぐ新しい家に住まうことになって、そうなればその人を呼び寄せる。

 ズキズキとした痛みを胸に感じながらも、私も一緒に住まわせようとしている社長の意図がわからなくて混乱する。


「佐織」

「え、っと……あの、ちょっと待ってください……」


 頭の中で、事実は事実として受け入れなければと思うけれど、思考の整理がうまくいかない。

 私はこのまま、社長と一緒にいてもいいんだろうか。

 他に大切な人がいるのに、私までもそばに置こうとしている社長がいったいなにを考えているのかが、わからなくなる。

 涙も流せず、まばたきも忘れる瞳が乾いて、視界がぼんやりとしている私は、頭を引き寄せられてそっと抱きしめられた。
< 280 / 337 >

この作品をシェア

pagetop