孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
『ねえ、サオリ。僕にしとかない?』

『え?』


 一瞬のうちに抱き込まれたのは、ルイさんの腕の中。

 社長とは違う感覚と匂いが私を包み込み、拒絶反応を起こす体がひどく強ばった。


『ユウセイは、サオリには手に負えないよ。今回みたく、いつ向こうに帰るかもわからない。そのときユウセイは、君を待たせることしかできないじゃないか』


 もがいて抜け出そうにも、強く抱き込まれていて逃げられない。

 社長以外の人の匂いが自分に付いてしまうのが怖くて、必死にルイさんを押しのけようとした。


『僕ならなにがあっても連れて行くし、置き去りになんてしない』

『違います……! 私は置き去りにされたわけではないです!』


 ぎゅっと手のひらに力をこめて、ルイさんの胸元を押しやるとさっきまでの強さが嘘のようにあっさりと解放された。


『社長は私のところに帰ってくると言ってくれました。私はそれを信じて、彼の帰る場所になってあげなきゃいけないんです』


 やさしい眼差しを崩さないルイさんは、コートのポケットに両手を入れて軽く体を揺らした。


『うん、よし。合格だよ、サオリ』
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