孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
「こりゃあ、えらい男前さんやんね」


 私の前でしかこぼさない九州弁で、叔父は私と社長をカウンターへと座るように促した。

 入り口から右手に構えている十席しかないカウンターの中央に、“予約席”と書かれたプレートが置かれている。

 店主が目の前を陣取る真ん中の席は、この店の上座だ。


「初めまして、肥前商事の橘と申します。
 鹿島さんにはいつもお世話になっております」


 席につく前に、社長はとても丁寧な日本語で叔父に挨拶をしてくれた。

 同性の叔父ですら男前だと口にする美青年は、挨拶をするだけでもうっかり見惚れてしまうほど物腰柔らかだ。


 ……というか、社長!?

 ここでは、ニホンゴワカリマセン、の設定は使わないんですね!?


 ほんのりと上気した頬を心の中でパチパチと叩き、夢心地に華を散らそうとしてはっと目を覚ます。

 おそらく今社長の脳内は、日本仕様になっているんだろう。
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