孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
 とても誠実そうな笑みに当てられるのは叔父だけでなく私も同じで、二人してぽうっと頬を染めてしまう。

 何度この人の立ち振る舞いに魅せられれば気が済むのか、まるでファンタジーのような世界から自分を叩き起こすのも少しずつ慣れてきた。


「お、叔父さん、こちらは今日からうちの社長に就任された橘社長。
 お願いだから、あんまり失礼なこと言わないで。恥ずかしい」

「社長さんでしたか、これは大変なご無礼を」


 しっかりと頭を下げてくれる叔父さんに、社長は「とんでもないです」と心広く流してくれた。

 黒のロングコート脱ぎ、私にも上着を脱ぐように目配せると、「お召し物、お預かりいたします」と言ってきた板前さんにふたり分のコートを預ける。

 さらに、私のそばの背もたれの低い椅子を引き、社長はとことんレディファーストをこなしてくれた。


「……ありがとうございます……」


 いい加減素直にもてはやされる私を見て、不満はなかったようで、社長は静かに私の左側に腰かけた。
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