孤高なCEOの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない
*


 今まで食べたことのないネタの数々をお腹一杯に食べさせてもらったあと、社長は支払いの一切を自身のカードで済ませようとした。

 「自分の分は出します」と言い張る私と、それを断固拒否する女尊男卑の世界からの申し子。

 押し問答を開始せんとする私達を止めたのは、叔父だった。


「今日の分はいただきません。
 代わりと言ってはなんですが、今度はぜひ取引先のかたとの接待に使っていただければと思います。
 それと、ふつつかな姪ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします」


 カウンター越しにまるで親のような目をした叔父。

 なんだか妙な語弊を感じたけれど、私も社長も素直に頭を下げるしかなかった。


 帰りはまたしても、いつの間に呼んだのかわからないハイヤーが、お店の前に停まっていて、電車で帰るなどと言わせない無言の圧力に、黒塗りの車内へと押し込まれた。


「いい叔父さんだな」

「はい」


 お腹一杯なっていたのも相まって、乗り心地抜群の揺れにうとうととなりかけた私に、社長はしみじみと口にした。
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