孤高なＣＥＯの秘密を知ったら、偽装婚約で囲われ独占愛に抗えない

　頭を下げていても、やっぱり感じる強い視線。

　胸の動悸を小さな深呼吸で抑え、お辞儀から直る。

　立ち上がり、す、と瞼を閉じた闇の中で、てんてんと三味線の音がこぼれだした。


　脚を揃えて膝を軽く折り、そこから自然な曲線で腕を真横に伸ばすと、長いあさぎの袖がゆらりと揺れる。

　お歌いの声に合わせて揃えた指先を頬に添え、小首を傾げて静かにその場で身体を回した。
　

　舞台の両サイドに付けてある音響のいいスピーカーを、叔父馬鹿なこの店の店主は、姪のために高いお金を出して設えてくれた。

　家庭用コンポの心もとない音楽では、私の舞いが霞んでしまうと、和室でも音をこもらせないようなこだわりを貫き通した上等なものだ。