世界できっと、キミだけが
「ちょっと待ってください。身代わりって言ったって、そんなうまくいくはず…」
「問題ない。都合がいいことに、娘とキミは瓜二つだ」
「瓜二つって…」
そんな事って、ある?
世の中に似ている人間って三人はいるって言うけど、今まであったことなんてないし。
身代わりを置かなくちゃいけないほど危険なことを私にさせようとするこの人の気がしれないし。
「私、この間の事で謝罪があるのかと思って来たんです。それなのに、こんな…」
「もちろん、ただでとは言わない。キミにとってもいい話だと思うが」
「はい……?」
「小野寺和麻(おのでらかずま)。それが君の父親の名前だろう。借金があるね。200万ほどだったか」
ギギッと重々しい椅子に深く腰掛けながら社長は言う。
この人、そんなことまで調べて…?
「その借金、すべて肩代わりしよう。そのうえ、身代わりになっている間のキミたち親子の生活費はすべて負担する。どうだ?悪い話ではないだろう」
「……っ、そんな、人の足元見るみたいな…」
「利害の一致。違うか?それとも、このチャンスみすみす逃すか?」