世界できっと、キミだけが
「あの、竜…?」
書斎を出て廊下を歩きながら、竜に声をかけた。
私の少し前を歩く竜は、振り向くこともない。
聞かれたくない話、なのかな。
「ねぇ、竜ってば」
「…なんだ」
再度呼びかけると、そこでようやく竜が立ち止まり振り向いた。
「なにって…」
「なにを聞きたいのか知らないが、お前には関係ないことだ」
「…ッ、そんな言い方」
確かに、私には関係ない話だ。
私は本来なら宇都木にも、きっと竜にも関わることのなかった人間。
結局、私は竜にとって警護対象者でしかないってことだ。
優しくされて、さっきみたいに庇ってもらって勝手に私が期待しただけ。
少しだけでも竜に近づけたって。
勝手に期待しただけ。
私は、それ以上何も言えなくなってしまった。