世界できっと、キミだけが
「しょうがないなぁ」
「は?」
ため息交じりに肩をすくめてみせる。
竜は怪訝な顔。
「とっておきのおまじない教えてあげるよ」
「なんだそれ」
「ケセラセラって知ってる?」
「…は」
「なんとかなるって意味。大丈夫、何とかなるよ!」
えっへんと胸を張ってみせる。
なにか起きるって決まったわけじゃないし。
なんとかなるって思ってたら、何とかなるかもしれないし。
安易だって言われるだろうけど。
「ま。お父さんの受け売りなんだけどね」
だから、あまり説得力ないけど。
でも、私は好きな言葉なんだ。
「じゃ、行くね!」
なんだか固まってしまった竜にそう言ってまとめた荷物を持って部屋を出る。
別れにしては上出来だ。
笑顔で別れられた。
最初からわかってた。
期間限定だって。
私の世界はここにはないのだから。
好きになってはいけないって。
それでも、大好きになってしまった人。
今でもやっぱり好きな人。