世界できっと、キミだけが
「ああいう世界に身を置いているとね、君のような素朴な人が恋しくなったりもするんだよ」
「…そうなんですか」
よくわからないけれど。
高級食材をふんだんに使われたフルコースで贅沢三昧した後で、なんだか質素なお茶漬けなんかが恋しくなるようなそんな気持ちだろうか。
私は、その気持ちならわかる。
幸子お嬢様として暮らしていた時、贅沢な食事よりも、お父さんと食べた節約料理が恋しくなってばかりだった。
「あ、あの、でも私…」
「すぐに返事をもらおうとは思ってない。少し、考えてほしいんだ」
「あ……」
断ろうと思っていた私を牽制するように浩一さんがそう言った。
私は少し考えて頷く。
簡単に答えを出すのは、失礼…だよね。
いくら私がまだ竜の事好きだとしても。
いつかは竜の事忘れなくちゃいけないのに。
「じゃあ、これからは普通のデートを楽しもうか」
「え…っ」
「君が好きな場所、いろいろいってみたいんだ」