世界できっと、キミだけが


「うぅ、重い…」


ついつい買いすぎてしまった。
今日は卵が安かったし、トイレットペーパーも切れそうだった。

ずっしりと抱えた荷物を何度も抱え直しながら歩く。

前方の信号が青に変わる。
急がなきゃ。
この信号は変わると長いんだ。



足早に横断歩道に足を踏み入れた。
その時。


キキキーッと左折してきた車が勢いよく目の前で止まった。




「きゃっ」



私は突然の事に驚いてバランスを崩す。
買い物袋が叩きつけるように地面に転がった。

ドク、ドク、と心拍数が上がる。
死ぬかと思った。

目の前で止まったのは、高級そうな黒塗りの車。
運転席から慌てた様子で人が下りてきた。



「申し訳ございません!大丈夫ですか!?」



青ざめた少し年配の気品のある男性が駆け寄ってくるのを見ながら、私はそれよりも大事な事を思い出していた。



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