世界できっと、キミだけが
「た、卵ー!!!」
セールで安かったのに!
慌てて買い物袋を広げると、無残にも割れ他の食材に漏れている黄身。
そ、そんなぁ…。
「大丈夫でしょうか…?」
「え…、あ…。私は……」
ショックを隠し切れず、うわの空で応える。
恨むわよ。
食べ物の恨みは怖いんだから。
でも、現実はそんな事言えるわけなくて…。
「…え、さちお嬢様……?」
「へ?」
男性は顔をあげた私の顔を見て、驚いたように声をあげた。
今、なんて?
よく聞き取れなかったけど、初対面だよね。
こんな気品のある人なんて知り合いにいないし。
「いえ、そんなはずは…。すみません」
「伊永(これなが)。まだか」
「社長…!申し訳ありません。それが…」
痺れを切らしたのか、後部座席にいたらしい運転手の男性よりは少し若芽の、お父さんくらいの年齢のおじさんが現れた。
きりっと眉が顰められていてとても厳しそうな人。