世界できっと、キミだけが
怖そう…。
「…ん?お前は……」
「え…?」
その人までも、私を見て目を見開いた。
いったい、なんなのよ。
「とりあえず今は急いでいる。けがはないのだろう」
「怪我は…。で、でも、その…買ったものが」
「そんなもの、買い直せばいい。伊永連絡先を控えて置け。後日その分請求してくれてかまわん」
「畏まりました」
「ちょ、ちょっと待ってください。別に、弁償してほしいとか…」
そりゃあ、してくれるなら助かるけども。
なんか、少しは申し訳ないって思ってるの?
全然誠意ってものが伝わらないのだけど。
確かに、飛び出しみたいになっちゃった私も悪いけど。
「連絡先を教えていただいてもよろしいですか?」
「別に、そんなのいいです。私も悪かったので。ぶつかったわけじゃないし」
「いえ。そんなわけにはいきませんので」
この人も雇われている人なんだろうか。
もしそうなら、そうするしかないんだろうな。
私が断れば、きっとこの人の立場が悪くなるのかも。
そう思うと、無下にはできなかった。