上司な彼とルームシェア
初体験。
今日も18時の定時で帰路につく。
コンビニで買った弁当と缶チューハイの入ったビニール袋を手にし、我が家であるアパートの鍵を鍵穴へ差し込んだ時だった。

『…………』
(あれ?)

いつもの動作で回したつもりが、解錠する音がしない。

「逆に回しちゃったかしら?」

『ガチャン』
「あれ!?閉まったよ?」

逆に回した鍵は見事に施錠された。

「……ゴクン」と一息のんで、

『カチャ』

勇気を振り絞り解錠し……そっとドアを開ける。

「ーーーーっうぁぁ……」

上手く声も出なかった。

小さなワンルームのアパート。
廊下には白く乾いた靴後。
玄関から見渡せる奥の部屋は、洋服や下着、タオルが箪笥から滝のように流れていた。

そう。私、蒔田 由紀恵 27歳、人生初の空き巣を体験しました。
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