上司な彼とルームシェア
大家さん、お世話になります。
「真波、暫く泊めて!いやっ、今晩だけでもいいから!」
『ちょっと待って…………わかった。取り敢えず、今晩ね』

あれから現場検証が行われ、被害はタンス預金の5万円。
元カレに貰ったブランド物のネックレスだった。

こんなことなら、早いとこ売っとくべきだった。


空腹もとうに通りすぎてしまった22時過ぎ、コンビニ弁当片手に今晩何とか宿を提供してもらえる友人、畑江真波の家の前にたどり着いた。

のだが…大きな平屋建て。確か、真波ルームシェアしてるって聞いたんだけど……。

「ピンポン、ピンポン」

『はい。』

「あれ?あ、あの畑江真波さんのお宅でしょうか?」

『あーはいはい、真波ちゃーん』

『今開けるからね』

男の人の声……真波、男の人とルームシェアしてんの?

ーカチャン、ガラガラー

「由紀恵、遅かったね、大変だったね」

「ごめんね、急に。他にあても無くて…。」

すると、真波の背後からぬっと大きな影が現れた。

「部屋は空いてるからね、暫く居てもらっても大丈夫だよ」

と洗いざらしのぼさぼさ茶髪頭の大男が言った。

「へ?」

「由紀恵、こちら大家さん」

「あ、夜分にすみません。蒔田由紀恵です。今晩はお世話になります。」

と、由紀恵が頭を勢いよく下げると

「ゆきえちゃん、大家の俊哉です。宜しくね」

長めの前髪の下から覗く、アーモンド型の大きな瞳を三日月にして、大家さんは白い歯を見せて家の中へと招いてくれたのだった。
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