常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「山田くん、お客様の顧客番号を教えて」
山田が番号を調べて答えるのと同時に、彼女の指が動く。Enterを叩いて、表示された画面を一瞬見ると、すぐに端末をくるっと回して、大地の方へ見せた。
「上條課長、お客様は仙台支店に株式をお持ちです。約定日を見るとかなり前ですね。塩漬けになってるものじゃないですか?」
大地は屈んで画面を見た。
「すでに売買する権利はお客様からうちの会社に移ってますが、このままでは仙台支店でないと売れません。これからこの株式を本店に移管する手続きをとりますが、それでよろしいですか?」
「あっ、ああ、頼む」
「では、電話をお借りします」
彼女はすぐに電話の受話器を取って、内線ボタンを押した。
「……お世話さまです。仙台支店ですか?」
彼女の声は電話を通して聞いても心地よさそうだ、と大地は思った。
「本店営業事務の田中です」