常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「今日の礼がしたいな。呑みに行こう。あ、今週の金曜の夜がいいな」
突然、大地が言い出す。
「連絡先、教えてくれ。今、スマホ持ってないのか?」
亜湖は身体を反転させて、制服のスカートからスマホを取り出す。そして、いつものように、蓉子のダミーのLINEのIDを言おうとしたら……
大地がひょいっと、背後から亜湖の手からスマホを取り上げた。
「あ……」
「いいから、いいから」
大地は「二人羽織」状態で、亜湖のスマホを勝手に操作しだした。
そして亜湖の手に、ほら、と返した。
それから、スーツのジャケットから自分のスマホを取り出し、確認した。
「おまえとおれのLINEのIDとメルアド、交換できたぞ」
大地はいたずらっ子のように、ニヤッと笑った。
亜湖の鉄壁だったガードが、なす術もなく音を立てて崩れていく……