常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……亜湖ちゃん、お父さんから僕と大地のこと、聞いてない?」
亜湖は首を振った。つい最近、本社で重役会議があったため、父親が単身赴任先の名古屋から東京に戻ってきていたが、どんなことが話し合われたかなんて、彼女が知るわけがなかった。
そもそも、亜湖の父親……田中常務は家族に会社のことなど話す人ではないのだ。
「来年ね、僕と大地、丸の内の本社に部長待遇で戻されるそうなんだ」
そういえば、大地は大阪にいる上條専務の息子だった、ということに亜湖は、今、気づいた。
「そして、ゆくゆくはどちらかを副社長にするために、僕たちを競わせるらしい」
亜湖は、それがわたしとどう関係があるの?という目をした。
「僕の父は社長だから、当然息子である僕の後ろ盾だ。大地の父親は上條専務だから、当然息子の大地の後ろ盾となる」
亜湖のまっすぐだった瞳に、突然翳りが差す。
「どちらが副社長になるかは、きみの父親……田中常務がどちらにつくかにかかってる」
……上條課長もわたしのこと、常務の娘だって知ってたんだ。だからこそ、わたしに近づいたんだ。