常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……上條さん、おうちに着きましたよ。エントランスへはどうやって入るんですか?」
「課長」と呼ぶと大地が怒るので、亜湖は仕方なく「さん」呼びにする。
大地はスーツのジャケットの内ポケットから、黒い濃淡のある格子柄のカードケースを取り出した。ダミエ好きの亜湖はアンフィニだ、と思った。
彼が所定の位置でカードケースをかざすと、目の前の巨大な自動ドアが左右に開いた。
中からあわただしく、だれかが出てきた。
「……上條さま、どうなされましたか?」
ホテルのドアマンのような制服を着た、水島や新田に感じが似ている王子さま系のイケメンが駆け寄ってきて、亜湖から大地を引き取る。このマンションのコンシェルジュのようだ。
亜湖は助かった、とホッとした。
では、わたしはここで、と会釈して辞去しようとすると……がしっ、と大地に手首をつかまれた。
イケメンのコンシェルジュが、
「上條さまのお部屋までご一緒します」
と言って、手首をしっかりつかまれた亜湖ごと、高層階専用のエレベーターへ連れて行った。