常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「……最近のFA課はどんな感じ?」
水島がさわやかな笑顔で尋ねた。
ファイナンシャル・アドバイザー課は一階の店舗の窓口を担当している、いわば本支店の「顔」というべき部署である。
かつては「レディ課」と呼ばれ、営業職の女性社員ための課であったが、現在は男性社員も配属されている。しかし、それはごく少数で、今でも女の園であることに変わりない。
その中で、常に課内で営業成績トップを奪い合っているのが、吉川と中西だった。
同じ営業職とはいえ、ほぼ男性社員で占められている大地や水島の営業課は、出先から戻ってきても裏口近くの階段を上がって二階に直行するため、一階の店舗に行くことはまずないから、接点がほとんどないのだ。
もちろん、営業課とFA課は、営業部内で営業成績を競うライバルだ。
「……やっぱり、ネット証券の影響は絶大ですよね」
役職が上の二人がいるため、吉川は敬語を使った。
「この前いらした年配のお客様には、スマホからネット証券へのログインがどうしてもできないから、代わりにしてくれって言われました」
中西がアンニュイな苦笑を浮かべる。
「うちのHPのサイトからも取引できるようになってるんだけどなー」
水島が腕組みする。彼は本社にいた頃、まさにそのシステムを開発する仕事をしていた。
「PR不足だろ。知られてないんだ。……うちはまだまだ営業は『足』でやれ!って体質だから」
大地が渋い顔をする。