常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
……確かに同期と後輩を誘ったはずなのに。
田中あづさは困惑していた。
なのに、今、自分の両側を挟んでいるのは、FA課二大派閥の長、吉川主任と中西主任だった。
もちろん、犬猿の仲である。
「中西、あんた、後輩脅して代わってもらったでしょ?」
ツヤッツヤの長い黒髪がご自慢の吉川がじろりと睨む。
「いやだぁー、あんたと同じじゃないわよ、吉川」
くるんくるんの栗色の巻き髪がご自慢の中西がふふんと嗤った。
二人ともひさびさのコンパで気合いが入りまくっているのか、メイクが一周回ってバブルの時代になっていた。平均的日本女性の顔立ちの田中あづさのナチュラルメイクがすっぴんに見える。
いや、田中あづさだって、コンパに参加しないので有名な、専務の息子の上條課長が来るというので、がんばってメイクしてきたのだが。
さらに、上條課長だけでなく、社内で彼と人気を二分する、社長の息子の水島課長までいる。
彼もまた、コンパに参加しないことで知られていた。
今まで、特に目立つこともなく、真面目に地道に毎日を過ごしてきた田中あづさとって、この状況はなにがなんだかさっぱりわからなかった。
モデル並みのイケメン課長二人が対面に座っている。できるだけ関わらないようにしてきたお局さま二人が両脇にいる。
田中あづさは緊張のあまり、ぶっ倒れそうだった。