常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
亜湖のシフォンの白い七分丈トップスとペールブルーのフレアスカートに合わせるように、大地はネイビーと白のボーダーの半袖サマーニットとオフホワイトのクロップドパンツを身に着けた。
「焼肉、食いてぇな」
昨夜からがっつり体力を使った大地は「そういう関係」になった男女が食べに行くという都市伝説の定番料理を挙げた。
「ん……そうだ。二人用の個室がある小洒落たお店、知ってるけど?」
……なんでそんな「お忍び」っぽい店を知ってんだ?だれと二人でそんな店に行ってんだ?
大地が眉を顰める。
「蓉子と美味しいお店を食べ歩きしてるの」
亜湖はふふっ、と笑った。
……また、蓉子か。慶人だけじゃなく蓉子まで恨めしくなってきた。
亜湖は安くてもっとがっつり食べられる焼肉屋も知っていた。でも、大地に呼ばれてショットバーへは行ったが、呑み会のあとだったのであまり「デート」のようには思えなかったから、ごはんを二人で食べに行く今が「初デート」のような気がした。だから、雰囲気を大事にしたかった。
二人で部屋を出るとき、亜湖がなにやら辺りを見回していたので、
「亜湖、どうした?」
と大地が尋ねると、亜湖が答えた。
「忘れ物は絶対しちゃいけないな、って思って」
大地が怪訝な顔になる。
「だって以前、彼女と別れる際に、部屋に残った私物で揉めたんでしょ?」
大地の顳顬に青筋が立った。
「なんでつき合い始めたばっかりなのに、別れるときのことを考えるんだ!?」
「だって……」
亜湖がきょとんとする。
「実家にあるおまえの私物、まるごと持ってこいっ!喜んで置いてやっからっ!!」
……おれがおまえをこの部屋に入れた意味を、まーったく理解っていない。