常務の愛娘の「田中さん」を探せ!

「……なんでここに来たんだ?」

店の外に出たところで、大地が(いぶか)しげに訊く。

「ヌケガケはよくないなぁ、上條課長」

水島はにやっ、と笑う。

「……どうやら、『常務の娘の田中さん』じゃなかったみたいだけどね」

「おまえも常務の娘を探しているのか?」

水島がふふん、と笑う。

「ということは、おまえも常務の娘がだれなのか、わかってないんだ?」

水島がうっ、と詰まる。

箝口(かんこう)令が社長一族にまで及んでいるとは……常務の、娘に対する溺愛ぶりに辟易する。


大地は思わず、東京の星のない夜空を見上げた。

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