常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
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その翌週の金曜日。

めずらしく得意先との接待が入ってなかった大地は、知らぬ顔を決め込んでいた面倒な伝票整理に取りかかったあと、まるで厄介払いでもするかのように派遣の子の机にそれらを置き、なんとか午後七時には上がることができた。

田中 沙恵子から「ビアガーデンへ行きませんか」という誘いのLINEが来ていたのだ。
日本橋で待ち合わせたので、てっきりデパートの屋上なのかと思ったら違った。

「『ビアガーデン』って言った方がわかりやすいかな、と思って。でも、本当は『ビアテラス』って言うんです」

田中 沙恵子が少しはにかみながら言った。

郷土料理の居酒屋なのであるが、建物の屋外に張り出されたテラスには、カフェのようなテーブルや椅子が置いてあって、そこでビアガーデンのように呑めるようになっていた。

さらに、隠れ家風のその店は、ビアガーデンのように大声ではしゃぐ(やから)がいる雰囲気はなく、しかも料理は海の物や山の物が豊富な四国の郷土料理なのだから、申し分ない。法人担当の営業職(セールス)である彼女が接待で使っている店なのだろう。

テラス席の一隅に腰を据えた大地と田中 沙恵子は、大ジョッキのビールで乾杯した。

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