常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
……だけど、諦められなかった。
話しかける勇気もないくせに、先輩が父親が専務を務める証券会社に入社したと知って、必死に勉強や就活をして、なんとか内定をもぎ取った。
研修期間を終えて、配属先が生まれ故郷の名古屋支社に決まり、両親は喜んだけれど、自分自身の落胆は並々ならぬものだった。
名古屋にいたら、東京で開かれるW会にさえ出席できない。こんなことなら、東京エリア限定の総合職にすればよかった、と何度思ったかしれやしない。
でも、名古屋でしぶとくしぶとく上司に東京へ転勤させてほしい、と言い続けた甲斐あって、やっとこの春、念願の東京、しかも大地と同じ本店への異動となった。
だけど、同じ営業部のはずなのに、大地の二階の営業二課と自分の四階の法人営業課とはほとんど関わりがない。
先輩は社食を利用している、と聞いてはいたが、慣れない部署でお昼休憩のときも仕事しないとやっていけない。だから、出社前に買ったサンドウィッチやおにぎりをデスクで食べていた。
この間やっと、全体会議があって大地を拝むことができた。この会議は主任以上でないと出席できないので、このときほど自分が「主任」であることを誇りに思ったことはない。相変わらず、物怖じせず堂々と持論を展開する姿に、胸がきゅんきゅんした。
だから終わったあと、三階の自販機まで、大地のあとを追ってきた。