常務の愛娘の「田中さん」を探せ!
「あの……なにかありましたでしょうか?」
震える声で小田が尋ねた。
小田は自分と同じ役職の「あの人」に、しかも入社期間は自分の方が長いというのに、緊張のあまり敬語になっていた。
……ああ、どうか、自分ではありませんように。やっと、田中あづさとデートに漕ぎ着けてこれから、っていうときなのに。
小田は祈った……が、その瞬間、ずいぶん長い間先祖の墓参りをしていないことを思い出し、悔やんだ。
「……山田くん、ってどなたですか?」
「あの人」は静かに言った。
でも、その声は二課どころか一課にまで届いた。
そのくらい、みんな固唾を飲んで事態を見守っていた。
……ああっ!おれじゃなかった‼︎
小田はろくに墓参りもしてないのに助けてくれたご先祖さまに感激して、まるでアラーの神に捧げるようなポーズで感謝の意を示した。
ちなみに小田の家は代々仏教徒である。
「あそこにいます!」
小田は山田を指差して叫んだ。
……山田は速攻で身バレした。