マドンナブルー
 今日、警察署を出た直後の杜は、空だって飛べるのではと過信するほど、自信をみなぎらせていた。

「わかりました。ちゃんと話します。でも秘密を守ってくれますか?この話は誰にも言わないって・・・・・・」

薄暗い取調室で、杜は畑山という巨漢の刑事と向かい合っている。杜は観念し、畑山に口を開いた。

「俺の友達が及川に妊娠させられたんだ。そのうえ浮気したんだろうって逆ギレされて、殴られたんだぜ!ひどすぎるだろ!?」
「だからって暴力はだめだろう」
「しかたないだろ。それしか思いつかなかったんだから。刑事さんだって自分の娘が同じ目にあったら、俺と同じことするだろ?殺してやりたいと思うだろ?」

 畑山はその質問には答えず、

「暴れた理由はよく分かった。その友達がお前の大事な人だということもな」

 畑山に胸の内を言われ、杜は決まり悪そうに笑った。畑山は最初、若者同士のいざこざが情に駆られて激化したものと、簡単に考えていた。複雑な人間模様が絡んでいると見て、杜の話と、彼自身に興味を持ち始めた。

「ところで、お前がさっき話した計画とやらが気になるな」

 杜は首を縮め、照れくさそうに笑った。

「実はさぁ俺そのこに惚れてんだよ。いい女なんだよ気が強くてさ。でも根は優しいこだから、あんなゲス野郎の子供でも本当は産みたいんじゃないかと思うんだ。だから俺・・・・・・」

 彼は言葉を詰まらせた。照れをごまかすようにニヤニヤした後、思い切ったように、

「俺、そのこにプロポーズしようと思ってる!」

 畑山は泰然自若として顔色を変えず、

「お前まだ高校生だろ。世の中そんなに甘くねぇぞ。学校はどうするんだ」
「学校なんて今すぐ辞めてやる!」

 杜は威勢よく立ち上がった。

「俺なりに色々考えたんだよ!どんなつらい仕事だってやってやる!健康な体さえあれば何だってできるだろ!?」

 畑山は相変わらず目に冷たい光を宿し、無言で杜を見ていた。
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