溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

彼女の美に対するストイックさは本当にすごいと思う。毎日かかさずフルメイクして、ネイルして、綺麗に髪を巻いて。化粧すら面倒な私には到底真似出来そうにない。

昼もガッツリ食べるし。現に今だってオフィスグリコで別腹を満たしている。同じ女でも全く真逆だ。

「なになにー? なんの話ですかぁ?」

突然事務所のドアが開いたかと思うと、陽気な声と共に真壁くんが入ってきた。そしてすぐ私とユリさんのいるカフェスペースにやってきた。

「真壁くん、まさか今出社?」
「はい! おはようございます」
「いやいや、もうお昼だし」
「フレックスタイム制っていいっすよねー。自由で」
「今からだと夜遅くまで働くことになるんだよ? 全然よくないでしょ」
「いや俺、夜強いんで」

ニカッと白い歯を見せ得意げに笑う真壁くん。本当、相変わらず自由人。彼はプログラマの一人で、年は私の一つ下の23歳。
すらりとした長身で、くりっとした目に、可愛らしい顔立ちをしている。それに加えやたらとひっつき虫で、触りたがり。俗に言う仔犬系男子といった感じ。

< 13 / 291 >

この作品をシェア

pagetop