溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

「あいつのしつこさには本当困ってた。連絡しても返事がこないだとか、どうやったら復縁できるかとか、いちいち俺のとこに連絡してきて、終いには会う約束してたのにドタキャンされたとかくだらないことで会社にまで来るし。だから昨日井上に、あいつをどうかしろ!って電話かけたとこだったんだ」

やっとこれで解放されると言ってグッと伸びをする九条さんは、本当にスッキリとした顔をしている。

「あの、じゃあ、私は朱音さんに遠慮することないってことですね」
「遠慮?」
「私ずっと誤解してたみたいです。朱音さんは九条さんが好きで、昔付き合っていたんだろうなって」
「俺を避けていた理由もそれか?」

ギクッ。やっぱり避けいてたのバレてたんだ。

「目も合わせないし、話しかけようとしたら逃げられるし、けっこうきつかったんだけど」

そう言いながら九条さんが覗き込んでくる。慌てて体を反らした。

「そ、それもありますけど、九条さん女嫌いだっていうし、もう諦めなきゃって思ってて……」
「女嫌い? 俺が?」
「違うんですか? 真壁くんがそう言ってましたけど」

九条さんはしばらく考えた後、あぁと思い出したように口を開いた。

< 206 / 291 >

この作品をシェア

pagetop