溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「とりあえず帰って残った仕事を片づけるとするか」
彼を前にそんな未来を想像していると、九条さんが私の手を取り歩き始めた。
「えっ、あ、はい」
「仮眠室でさっきの続きになんてなったら嫌だからな」
その言葉にボッ!と火が付いたように顔が熱くなる。そんな私を見て九条さんは意地悪に笑っている。
「なに固まってんだよ」
「だ、だって!」
今更だけどなんて大胆なことを言ったんだろう。これじゃあ自分で自分の首を絞めてしまったようなものだ。
「いちいち狼狽えすぎなんだよ、青は」
……えっ!?今青って言った? もしや私の名前を言いました?
「く、九条さんもう一回言ってください!」
「あ? なにがだよ。ほら仕事モードに切り替えろ」
「そんな無茶な! 鬼すぎでしょ!」
そう言っている間もお構いなしといわんばかりに強引にオフィスへと引きずっていく。必然と九条さんの顔は鬼に戻りつつあって、さっきまでの甘い雰囲気はどこへやら。
でも……そのギャップが好きです!
九条さんに向かってそう叫びそうになった私は正真正銘のドMで、彼に惚れているんだと痛感した。