溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜


俺は自分の仕事のこと、立場を隠すことなく話した。聞いているのかいないのか、目も合わせてもらえなかったが、会ってもらえただけましだ。

西沢も自分なりに今の仕事のことや、それに対する思いをたどたどしいながらも、必死に伝えていた。

親の前でこんなにも緊張する子供がいることにも驚いたが、もっと驚いたのが、両親に対して敬語だったということ。

それに久しぶりの再会だというのに、そこに笑顔の一つもなく、目には見えない壁のようなものが他人の俺にも伝わってきた。

きっと島を司る者の子供として、賢く、女の子らしく、議員の娘らしくいろというプレッシャーを幼いころから受けてきたのだろう。

この広い家の中で窒息しそうな西沢の幼少期が、目に浮かんだ。

< 261 / 291 >

この作品をシェア

pagetop