溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

「鍵がないなら入れないだろ。どうするんだよ」
「……と、とりあえずユリさんの家か、真壁くんちに行こうかなって……」
「お前バカか! そんな無防備に人の家に泊まるな!」
「バ、バカって。でもユリさんならここから近いし、だいたい女同士なんだからいいでしょ。そりゃあ、真壁くんちはちょっと抵抗ありますけど。でも彼と一晩二人でも何も起こらないと思うし……」

そこまで言うと、向こうから盛大なため息が聞こえた。なによ、そんなに呆れなくても。どうせ私はドジですよ。こんなときに鍵を失くす大馬鹿です。

「西沢、」
「……はい」
「待ってろ」
「え?」
「いいか。そこを動くな。わかったな」

それだけ言うと電話は切れた。え、なに?どういうこと?

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