溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
シャワーを借りリビングへ戻ってくると、部屋にはおいしそうな香りが立ち込めていた。
その匂いを辿るようにダイニングテーブルに近寄ると、チャーハンとスープが置いてあって、思わず唾を飲んだ。ザ、男飯って感じだけど、
「……おいしそう」
思わず本音が溢れる。そんな私に冷蔵庫からビールを取り出しながら九条さんが食え、と顎をしゃくって言った。
「えっ! いいんですか!」
「あぁ」
「じゃあ、遠慮なくいただきます」
席に着くとすぐ、チャーハンにパクつく。あの鬼上司とプライベートで向かい合って手を合わせるなんて、とんでもなく奇妙な絵面だと思う。しかもお風呂上がりで、九条さんのTシャツを着ているし。
でもどういうわけか彼に乗せられっぱなしで、拒否できない自分がいる。