溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜

「ほら、ぼけっと突っ立ってんな。シャワー浴びろ。風邪ひくぞ」

ぼんやりそんなことを考えながら辺りを見回していると、背中をとんっと押された。

「え? シャワー?」
「濡れてるだろ」
「えっ、でも……」
「いいからいけ」
「は、はい! お借りします!」

ドスの効いたあの声に条件反射のごとく体が動き、戸惑いつつも九条さんのTシャツ片手にお風呂場へ向かった。

なんでこんな展開に……。しかしあの人相でフライパン振るって。金棒を持ったリアル鬼じゃないか。想像しただけでふふっと笑いがこみ上げた。
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