溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜




「うわ、なにここ!」
「いい店でしょ?」

得意げにそう言いながら真壁くんが立ち尽くす私を店内へと促す。そこへすかさず店員さんも寄って来て、予約していた真壁だと告げれば、席へと案内された。

チーズダイニングバーと看板を掲げる店内は、キャンドルの灯りがゆらゆらと揺らめき、なんとも雰囲気がある。
カウンターにはアクアリウムがあって、そこで数名のカップルがイチャイチャするのが目についた。

「なんか場違いじゃない?」
「そんなことないですよ。俺たちもこうしてるとカップルに見えます」
「いやいや、違うから」

あっけらかんとさも当たり前のようにいう真壁くんだが、私は“ただの仕事仲間です”と背中に張り紙をしたい気分だ。

「まぁまぁ、そんな細かいこと気にしないで、今日は楽しみましょう。ね?」

と笑顔で言われ曖昧に頷いた。

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