溺甘豹変〜鬼上司は私にだけとびきり甘い〜
「真壁、聞いてる?」
「なんすか。痛いんですけど、腕」
しぶしぶといった様子で振り返った真壁くんが、不機嫌そうに言う。
「昨日のこと、西沢に謝ったの? それにほどほどにしないといつか痛い目に合うよ、あんた」
ドスの利いた声に、なぜか私の背筋が伸びる。
「謝りましたよ。 つーか、まじもう勘弁してください。反省してますって」
その顔はさっき電話をしていた時のものとはうって変り、めんどくさそうというか、うんざりしたような顔をしていて。そんな真壁くんに、ユリさんはどこがよ!と鋭く突っ込んだ。
「凝りもせずもう女作ってるじゃない」
「え? あぁ、さっきの? 違いますよ、これから彼女にするんです」
悪びれる様子もなく、当たり前のように言う真壁くんにギョッとしながらユリさんと顔を見合わせる。どこが反省しているんだか。
これじゃあきっと、数日後には同じことを繰り返しているだろう。この人は女の子が側にいないと死んじゃう病気なのか?
「だいたいみんなで寄ってたかって責めなくてもいいじゃないですかぁ」
真壁くんが小さくため息をつきながら呟いた。その声にみんなって?と、ユリさんと綺麗にハモった。