ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



「ッ、ハ! ハア――」

杉山さんが見えなくなると、僕の身体は自由を得た。

「ピンちゃん、行くぞ!」

鬼がいなくなった以上、ここにいたってしょうがない。

見えなくても気配はわかる。“彼女”はもういない、と。

そう、終わりの儀式は、失敗に終わったんだ。

ガタガタガタガタガタ。

独り取り残された“子”は、その場にうずくまり、顎を震わせて歯をかち合わすだけ。

「ピンちゃん!! しっかりしろ!」

「……ゅ、祐一郎……」

両腕を掴んで揺さぶると、ようやく僕の目に焦点が合う。

「もうダメだ……ボクも死ぬんだよ」

垂れた鼻水をぬぐう気力すらない悲愴感と、瞳に浮かべる恐怖。

「杉山さんを捜すんだ!」

「……ぃ意味ないよ゛」

そんなことはない。ルールにもちゃんと明記されている。

“邪悪な霊”である伊達磨理子が、“鬼”を追う時間は30分。

その時間だけ、逃げきればいい。

3時7分。

僕たちも公園を出た。

単独行動を嫌がるピンちゃんを説得し、二手に分かれる。

『手足のない女が、木を這ってたんだよ! 狂ったセミみたいに、上から下へ……』

路地や暗がりを懸命に捜しながらも、彼が語ったこの言葉が頭から離れない。

想像しただけで足が震え、もう何度も膝が折れた。

ひとりを嫌がる気持ちがわかる。

が、しかし。

……見たい……。見てみたい!

真逆の感情も共存していた。

恐怖というよりは興奮に近い衝動に、体が震える。

……これが武者震い?

「ハハッ、ハハハハハッ!」

気もおかしくなるさ、こんな夜が3日も続いているんだから。



 
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