ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ2 【完】



ズッ──


 ザザザザザザッッ――


「……い、いない! 見えないよ!」

「え!?」

杉山さんは現実から逃げるように、かざした腕に目を押しつけたまま。

感じているのだろう、背後からの殺気を。

「お前らには、見えるんじゃないのか!?」


ズザザザザザッッ──


「あ、ああ、あの日は見ええたのに、ホン゛トに、い゛いないんだ!」


ザザザザザザッッ――


音の大きさからして、すぐ近くまで来ているはず。

しかし、あの日彼らが見たはずの女の姿は見えない……らしい。

もっと言うなれば、今日はその音は、はじめから大きかった。

「ッッッッッッ!?」

誰しも一度は感じたことがあるだろう。

「どうした!?」

背後からの視線を。

「あ゛わわ゛わわ゛わわ……」

意を決して振り返ると、たいてい誰もいなくて安堵するのがオチ。

「おい!! ピンちゃん!」

だが実はその視線、うしろからではなく、“上”からだとしたら……?

「木に! い゛る゛!!」

唯一の“子”であるピンちゃんは、腰を抜かして倒れた。

そのせいで、あれだけ念を押した小指が離れてしまう。

「ひぃーーっ゛!!」

「杉山さん?!」

“鬼”である彼もまた、上を見て、地面に尻を打ちつけた。

すぐさま身体を反転させ、手と膝で這って逃げようとする。

「行くなっ!」

僕はとっさに肩を掴んで止めた。

瞬間。

「う゛っ!」

……クソッ、またか!?

金縛りが襲い、身体に力が入らない。

「はな゛せ!!」


 ズズザザザザザッ――


なおも、木から降りてくる、その音。

儀式のことなど忘れ、完全に正気を失った杉山さんは、一目散に公園を出ていく。

「ぎゃやぁ゛――!」

尋常じゃない雄叫びとともに。



 

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