ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
聖矢が放った衝撃的な告白は、振り子時計の刻む時を空間にバラまく。
数秒の間を経て、我先にと問いただしたのは浜田だった。
「ねえ、ボク。この女の人知ってるの?」
彼はパソコンの画面を指さしながら膝を折る。
「ぁ……っ」
たちまち、聖矢は自分の犯した過ちに気付いて、母親の後ろに隠れた。さも怯えながら。
僕には容易に想像できる。
『このことは誰にも言うな。お前が大人になっても、ずーっと見張ってるからな』
聖矢の頭の中を駆け抜けたのはこの言葉だろう。
「閉じこめたって、どういう意味?」
すかさず浜田の援護射撃を行う斎藤だったが、この秘密には協力者がいることを忘れてはならない。
「もう一度見てごらん? ほら」
母親も、浜田と同じように画面を指す。
「…………」
「知らない人でしょ? ね?」
刑事のふたりにはきっと、優しく穏やかに感じるその疑問符。
でも僕は、瞳の奥の圧力を見た。
「ぅ、うん……」
「すみません、刑事さん。子供の言ったことですからお気になさらないで」
浜田と斎藤はスッと顔を見合わせ、無言で会話する。
無垢な子供が、この凄惨な事件に関わっているわけがない。
「ですよね!」
そう結論づけて、コートを手に取る。
聖矢の誘拐事件は宝泉家のタブーであり、僕は今、その一員だ。
ふたりは星都中に向かうため、すぐに靴を履いた。
「くれぐれも気をつけて!」
と、僕らにクギを刺して。
見送った後はもちろん、小さな被害者に視線が集まる。
「さっき言ってたのは本当か⁈」
「…………」
僕の問いに、聖矢は静かにうなづいた。
「あの女の人がボクに言ったの」
「なんて?」
すかさず彩矢香が割り込んだが、たちまち口をつぐむ聖矢。
その様子はまさしく、男と男の約束が原因だ。
「朝からイヤなこと思い出させたな。さ、部屋に戻って一緒にゲームでもやろう!」
「……ぅ、うん!」
僕は聖矢の肩を強引に抱いて、階段を上がった。
「たっちゃん……」
もちろん母と姉は首を傾げていたが、隣にいる弟は僕をヒーローのような目で見ている。
僕は着実に、彩矢香を取り戻すための第二段階の階段も上っていた。