ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「あ゛―ぁ、また負けたー」
「たつにぃ弱すぎ!」
「やめやめ! 協力してできるやつやろうぜ!」
「しょうがないな……負けるの悔しいんでしょ?」
「……はははっ」
このゲーム機みたく、簡単にリセットできるなら、死んだ3人や畑山はいつからやり直したいだろう。
きっと大貫や康文も同じで、3年1組より前に戻りたいと願うはずだ。
僕もそう。それができたら、こんな苦労をしなくて済んだ。
彩矢香はずっと僕のモノだった。かもしれない……。
なんて思っていたその時、
——トントンッ!
また彩矢香が僕を呼び出す。
あるファミレスに集まろうと、美佐子が呼びかけているらしい。
これは好都合。山口と彼女に確かめたいことがあったからだ。
すぐに車に乗り、向かうその車中、運転している彩矢香は弟からどんなことを訊きだしたか執拗に尋ねてくる。
あのことだけは伏せ、前に揺れた髪を耳にかけてあげながら僕は言った。
「さっきもゲームの最中にずっと笑ってたし、もうすぐ前のような元気で明るい聖矢に戻るよ」
でも、安心してほしい。
僕は聖矢のことをひとつの“ツール”としてしか見ていない。
彩矢香だって昔、帰り道に夕焼けを浴びながら言っていた。
『弟さえ生まれてこなきゃ、父は私のことをもっとちゃんと見てくれた。一生懸命勉強したって、振り向いてもらおうと努力したって、性別の壁が邪魔をするの』
と。
あいつは唯一、日本一の資産価値を持つ宝泉グループの跡取り息子。
でも、僕が婿養子として宝泉家に入れば、世襲を阻止できるかもしれない。
この大義のためなら、水嶋なんて姓も血筋も簡単に捨ててやる。
それに、当の聖矢はあの状態。家の敷地から一歩も出ることができない。
これが永遠に続けば、会社の経営なんて到底ムリなわけで、宝泉グループは僕と彩矢香のモノになる。
だから、あいつには申し訳ないが、あの家に一生縛りつけておく必要があるんだ。