ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



クラス編成の通知が家に届いたあの日、私史上初のガッツポーズが出た。

特進クラスが決まったからじゃない。

初恋のあの人に加え、上村くんとも初めて同じクラスになったからだ。

でもきっと、どちらの彼もそんなこと気にも留めていないだろう。

そうだとしても、純粋にうれしかった。

一方通行の幸福感からスタートした3年目の春、自身に新たな発見があった。

ひどく緊張してしまうと、記憶が飛ぶという事象だ。

それはちょっとした偶然が引き起こす。

私は“お”、上村くんは“か”。出席番号を男女で分けると、お互いに6番目。

日替わりで回ってくる日直で、私と彼の名前が黒板の隅に刻まれた。

成長とは感慨深いもので、そういう分野では引っ張るタイプじゃない上村くんと、キチッとこなしたい私。

だから、勇気を出して話しかけた。緊張をひた隠すため、昔のように……。

……うん、具体的に覚えていない。何を話したか。

抽象的になら、私のほうはギブアンドテイクで、彼のほうはキャッチアンドリリースだったかな。

このように、よくわからない表現に達するぐらい、あの時はひどく動揺していたということ。

ただひとつハッキリ言えるのは、その出来事が最初で最後、開桜中学校での良き思い出だった。



 
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