ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



いつかはバレるのかな、と危惧はしていた。

私と上村くんが同じ小学校を出ているということが。

知られたらどうなるか大体想像できたから、もちろん誰にも言っていない。

そもそも私には、話す友達すらいないし。

だけど、ふたりで日直をした後、なぜかすぐに皆に知られてしまった。

それからは黒板に相合傘を描かれたり、上村くんが何か発言すれば、

『どう思いますか、大貫さん?』

と、ふざけて絡んできたり。

私はいいの。いつも通り黙って座っているだけだから。

でも彼はその度にすごくイヤそうな顔をして、嫌がらせの火消しに必死だった。

話さなくなったのもそういうことが原因だったのに、すごく彼に申し訳ない。

私がもっと明るくて、かわいくて、発言力があったら……。

願うだけでは何も変えられず、クラスの興味が他に移るのをただじっと待つしかなかった。

私はそう思っていたけれど、上村くんは耐えきれなかったのだろう。

あの日。教科書やノートを両手に抱えて持って、生物室から教室に戻ったあのとき。

脚に違和感が走って一瞬、宙を舞った。

鳥のように羽根を広げたノート、はだけた教科書。

床に打ちつけられた筆箱が衝撃で開いて、「ガンバレ!」の文字が揺れていた。

『イッ……ッ゛』

『『アハハハハハッ』』

教室の中がドッと沸き、見上げれば手を叩いて笑うクラスメイト。

足首の痛みを庇いながらその先を見ると、上村くんの長い脚があった。

『え゛!?』

『『ハハハハハハハッ』』

『ほら、言えよ。ヤス!』

お調子者の尾堂くんの指示で、彼はどこか寂しげに、

『だ、ダルマさんがころんだ』

そう言った。



 
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