ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



私に対してのいじめはどんどんエスカレートしていった。

特に女子3人組が主で、色々な物がなくなったり壊されたりしたから、新しく買い替える必要があった。

母には相談できず、数回黙って財布からお金を抜く。なんとも不条理な罪悪感だ。

本当は私なりの救難信号だった。気付いてくれたら、助けてほしいと言えたかもしれない。

でも母は、お金に関してすごくガサツで、最近はそれが顕著に表れている。

夜のお店で稼いだ給料をすぐに使い果たして、月のある時期なるといつもスーパーの総菜が1品減った。その代わり、洋服や装飾品は増えていく。

こんな金銭感覚だから、私のSOSに気付いてくれなかった。

だが、あの男は違ったはず。

ある日、私はいつものように女子トイレへ連行された。

制服が半袖に切り替わった頃だ。

『なんか今日暑くない?』

そう半笑いで言って個室に閉じこめ、ホースで上から水をかけられた。

『これで脂肪が落とせるかもよ?』

湯之下美佐子の手には、掃除で使う筒状の粉洗剤。

それをかけられたら、乾かすだけじゃ済まなくなる。

私は渾身の力でドアを開けて、トイレの外に逃げた。

案の定、彼女たちは楽しそうに追いかけてきて、校舎の端の壁で逃げ場を失う私。

そのとき。

『何してんだ!』

担任の畑山がたまたま通りかかる。

3人は絶句して、私は心の中で「助かった」と安堵した。

しかし……。

廊下に点在する水滴から、ずぶ濡れの張本人まで見て、

『ほかの生徒が滑って転んだらどうするんだ! ちゃんとモップで拭き取っとけよ!』

そう言った。

忘れもしない。

その時の3人がニヤッと笑った顔と、畑山が振り返り際に見せた死んだ魚のような流し目を。



 
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