ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】



吹きつける冷たい風が頬を打ち、早くも皆に後悔の白いため息がこぼれる。

身を寄せて歩くはるかと美佐子は、直哉の歩くスピードに合わせて小走りになりながら訊いた。

「う゛ぅ~ねぇ、やっぱりやめよ? 寒さハンパない」

「ってか、どこに向かってんの?」

「決まってんだろ!」

“ダルマさんが転んだ”で連想する場所といえば一つ。

やがて目の前に、こじんまりとした公園が見えた。

敷地の中にある遊具は、昨日降った雪をうっすら被ったまま。

すでに時刻は3時02分になろうとしている。

薄気味悪くニヤリと笑う直哉が、月明かりさえ届かない隅の大木の前に立つ。

「最初の鬼は俺だ。みんな、小指を繋げー!」

すると、示し合わせたように皆が身を引く。

「え⁉ ……俺、次?」

ひとり反応が遅れた亮平は、渋々直哉と小指を繋いだ。

「リョウちゃんの隣!」

まだ媚売り中のはるか。距離を詰める絶好のチャンスに飛びつく。

「ホントにやんの?」

伝説的な都市伝説に対する好奇心と恐怖がせめぎ合っているのか、美佐子の表情は引きつっていた。

「うちには送られてきてないし」

「……ォ、オレも承認してへんし」

そう言って、集団から外れる茜と玄。

「どうせサムいオチだって!」

女の扱いに馴れた様子で、山口は美佐子の手を握る。

「小指だから! こ・ゆ・び!」

「おっと、こりゃ失敬」

ふたりの傍にいた康文は、うつむいたままどっちつかず。

弱さを見せれば、昔のように“鬼”が食らいつく。

「フンッ、ビビりすぎだろ」

「うるせぇ! やるよ! やりゃあいいんだろ!!」

すぐムキになるところは、直哉とドングリの背比べ。

「酔っぱらってるんだし、相手にしなくていいんだよ?」

彩矢香は康文を優しくなだめたが、引くに引けないようで、彼女と小指を繋ぐ。

僕は軽く嫉妬しながら、空いている左手の小指をそっと握った。

茶番だと思う反面、もし本当に呪いがあるとしたら、“あれ”を実証できるから。



 
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