ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】




「すみません、閉店のお時間になります」

時刻は午前0時。

締めの挨拶を亮平に押しつけ、帰り支度を始める面々。

クラスメイトの半数以上とここで別れ、残った者は有無も言わさず二次会のカラオケ。

中学当時を思い出させる懐メロで盛り上がる中、直哉と亮平はなにやらコソコソ話。

そして、見てしまった。

直哉が亮平に何か手渡しているのを……。

そんなことも忘れてしまうくらい、皆が満足げに店を出たのが午前2時半。

「微妙な時間だね」

電飾看板の下ではるかがつぶやくと、それ以上に目を輝かせるヤツがいた。

「だったらこれ、今からやろうぜ? 面白そうじゃん」

直哉はスマホの画面を差し向ける。そこに映っていたのは、大貫から送られたメッセージ。

――……。

誰もかれも微妙な反応。

露骨に嫌がっていたのは康文だけ。

「くだらねえ。ガキじゃあるまいし」

「あ゛? 誰がガキだって? さてはお前、ビビってんだろ?」

「は゛⁈」

またも一触即発のふたり。

面倒は避けたいと皆でなだめたが、直哉の執拗な挑発は止まない。

「もう分かったから! じゃあこういう時は……」

おなじみの多数決。

「ナオヤに賛成する人!」

はるかが中心に立って手を上げると、もちろん言い出した本人が真っ先に賛同する。

「どうせ電車動いてないし」

次に美佐子。僕は、彩矢香の反応を待っていた。

「しょうがないね」

彼女が手を上げた瞬間、

「ま、ヒマだしな」

僕も何食わぬ顔で合わせ、賛成派は半分の5人。

そうなると、組織票でまたひとり増える。

「お前が行くなら、俺も行くよ」

亮平も加わり、これで過半数を満たす。

「よし、決まりだな!」

意気揚々と歩きだした直哉は、康文の肩にわざとぶつかって勝気な表情。

「チッ」

逃げたと思われるのが癪なのか、彼も集団についてきた。



 
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