ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(上) 【完】
「ダ・ル・マ・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ」
わざと滑稽に振り向く最初の鬼、直哉。
「「クスクスッ」」
「ダ・ルマ・さ・ん・が・こ・ろ・んだ」
「「ハハハッ──」」
公衆便所の灯りが無造作になるわけではない。
遊具が勝手に動き出すわけでもない。
ただ、風に運ばれた落ち葉が眼前を通過するだけ。
こんな状況を可笑しく思えるのは生理的現象だ。
しかし……。
「ダ・ル・マ・さ・ん・が・ころんだ!」
次の瞬間!!
「ね、ねぇ!」
僕たちは笑えなくなる。
美佐子が、空を見上げて口をあんぐりと開けていた。
――……。
皆も目の前の光景に心を奪われる。
「雪だ……」
暗い空からヒラヒラと舞い落ちる粉雪。小指を離してとっさに受け皿を作った。
ただひとり、
「ダ・ル・マ・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ!」
彼以外。
「ほら雪だよ、ナオヤ!」
茜が肩を揺すっても、幻想的な夜に目もくれず、翳した腕に再び顔をうずめる。
「ダ・ル・マ・サ・ン・ガ・コ・ロ・ン・ダ」
「「ッ⁉」」
そのおどろおどろしい不快な声色に、一同が絶句。
「ナオヤ?」
僕はそう呼びながらも、彼ではない気がしていた。
と、次の瞬間。
「なな、な゛によこれ⁈」
ただならぬ予感を証明するように、視野の中で摩訶不思議な現象が起こり始める。
「雪が……戻ってく」
重力に逆らい、空へ舞い上がる粉雪。
紛れもなく、僕らのいる世界が一変した。