ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



『じゃ、お願いね』

『おう。任せろ』

家のことを水嶋くんに任せ、病院へトンボ返り。

どこから嗅ぎつけたのか、外は記者や報道クルーの溜まり場になっていた。

望んでいたはずの未来に恐れて固まる私の横に、父の顧問弁護士が腰を下ろす。

『気をしっかり持って。奇跡を信じよう』

『……はぃ』

強がる私を悟ったのか、誰にも言ってこなかった話をして和ませようとする。

『あいつ……せがれは、優しいだろ?』

『ぇ、ぁはい』

『上にふたり姉がいるんだが、あいつが一番最初に弁護士になりたいって言ってな、私は嬉しかったよ。でも、優しい奴には向いてない職業なんだ、弁護士は』

『…………』

『私も若いころはまともな人間だった。真実がすべてで、突き止めることだけが優しさだと思っていた。でも法廷はそうじゃない。無罪を信じていても、時には有罪だと途中で気付いても、判決まで闘うのが弁護士。イヤと言うほど葛藤したさ。でも結果的に、家族を養うために折れた。真実を追うことをやめてしまったんだ。あいつにはそうなってほしくないんだよ。優しさを忘れてほしくないんだ……』

これが父親の愛というものか。温かみを感じられて、目頭が熱くなる。

『親の敷いたレールに乗るのは簡単だ。でも、自分で夢を見つけて踏みだすのは苦労する。親に甘えてたら、すぐに潰れてしまうのさ。だから心を鬼にして、あいつを突き放した』

『もしかして、その反動で検事を?』

『ハハッ、笑っちゃうよな。あいつなりに考えたんだろう。私への復讐さ。でも、いい答えだ。検察なら妥協は必要ない。被害者のために精一杯の優しさを注げる職業だから』



 
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