ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



仏頂面の印象しかなかった父親が、初めて見せた穏やかな笑顔。

『愛してらっしゃるんですね』

『……あぁ。長く突き放しすぎて、元に戻れなくなってしまったが。親の心子知らずの典型だな』

『そうでしょうか。他人ならまだしも、家族だったら簡単に修復できますよ』

よく言う。壊しているだけの私が。

でも、願う気持ちは本物。

『私もこうなって深く思いました。父ともっと話しをすればよかったって……』

『……うむ、そうだな。努力してみるよ。まだまだケツの青いボンクラだけど、息子のことをよろしく頼む!』

『ぁ、頭を上げてください! 私のほうこそ、彼がいてくれて助かってます』

美化されてゆく家族愛。

相槌ではなく、全身全霊で奇跡を信じていた。

祈りながらそれを待っていても、午前3時が幅を利かせ、無性に気になってPCを開く。

秘密裏に仕掛けていた監視カメラの映像を確認するために。

見たかった。上村くんが鏡を割って、呪いが終わる瞬間を。

しかし……。

『そ、そんな゛……』

すぐさまこの目に飛びこんできた驚愕の光景を見て、私は言葉を失う。


彼ではなく、信頼していた水嶋辰巳が、バスルームの鏡を遮二無二割っていたのだ。

その目的はすぐにわかった。何故なら、私も湯之下美佐子に対して同じことをしたから。

ふたりが離れた隙に、あの手鏡を割ったのは私だ。

彼女を、連鎖する死から逃れさせないために。

『今すぐ私の家に向かって!』

『……ぇ゛、あのー……静岡のほ…』
『違う! 宝泉彩矢香の家! 早く!!』


午前3時3分。


起きたばかりの仲間には無理だ。

すぐに家へ電話をかけたが、外に出たふたりの耳に届いていない。

『お願い……出て。出て! やっくん……』

庭を映す監視カメラには、腰を落とす彼がいた。


——プルルルルッ……プルルルルッ……ズザザザザザッ。


『っ⁈』



 
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