ダ・ル・マ・3・が・コ・ロ・シ・タ(下) 【結】



叶わない願いだった。

記憶の逆行を経て、瞼を上げても、以前ように明るくて能天気な美佐子はいない。

「警察呼ぶね……」

「……あぁ」

彩矢香は冷静だ。でも、携帯から漏れた光に映しだされる涙を見逃さない。

手先のかじかみに息を吐く頃になってやっと、警察車両が大挙して押し寄せた。

この辺りでは極めて稀な猟奇的殺人死体遺棄事件の臨場なのだろう。

美佐子や僕らを取り囲む捜査員たちの表情は一様に鋭い。

「なぜ、こんな時間にここへ? しかも、東京から?」

第一発見者の当然たる苦境か、疑いを節々に織り交ぜた質問に、あるがまま答えた。

証拠としてあの動画も見せたが、担当する刑事の疑念を晴らすことはできず、

「ここじゃ寒いし、ね? 続きは署の方で聞かせてもらえるかな?」

と、暗に僕らを引っ張ろうとする。

そこで、奥の手を出すことにした。

「あの……宇治木隆盛という警察の人に連絡を取ってもらえますか?」

この名前を発した途端、周囲の捜査員がザワつく。

「無理なら、僕から電話をかけます。いいですよね?」

「あ、あぁ」

いかにも信じていないような口ぶり。それほど、彼らにとって宇治木は雲上人なのか。

あらかじめ登録していた番号に発信し、出てくれることを祈る。

『も゛しも゛し』

さすがにこの時間だ。明らかに、今起きたばかりの声。

『あの、今日お会いした水嶋です。水嶋辰巳です』

『……ぉ、あーキミか! もしかして、敬太くんのことで?』

『いいえ。それが……』

早口ですべての事情を話すと、目の色を変えたような口調になった。

『キミたちを担当している刑事に代わってくれるかい?』

『は、はい』




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